洗顔料には石鹸と洗顔フォームの2種類があります。どちらを使っているでしょうか?
美容に関心の高い人であれば「石鹸は肌に優しい」「洗顔フォームは肌に悪い」というフレーズを一度ならず目にしたことがあるでしょう。
今回は石鹸と洗顔フォームの違いと、どちらの方が本当に肌に優しいのか、についてまとめていきます。
簡単に言うと「洗顔フォームを使っている人はちょっと損をしているよ」というお話です。
1)石鹸と洗顔フォームの違いとは?
石鹸と洗顔フォームはまったく種類の異なる洗顔料です。まずは両者の違いを理解するところからはじめましょう。
洗顔フォームはマイルドな石鹸?
洗顔フォームにどのようなイメージを持っているでしょうか?
私自身は、スキンケアの勉強をはじめる以前にはだいたい以下のような認識を持っていました。
体を洗う用=石鹸
顔を洗う用=洗顔フォーム
体を洗うのには石鹸を使うけれど、デリケートな顔を洗うときには専用の洗顔料を使う。石鹸にいろいろと改良を加えてマイルドにしたものが洗顔フォームなのだろう、と。
つまり、洗顔フォームは石鹸のリッチ版であると認識していたのですね。わざわざ洗顔専用に作られた物なのだから、少なくとも顔を洗うのには石鹸よりも洗顔フォームの方が適しているのだろうと考えていました。
しかし、この認識はとんだ間違いであることを後に知りました。
「石けん」と「合成界面活性剤」
石鹸と洗顔フォームの違いは、使われている洗浄成分の違いです。
洗顔料は洗剤の一種ですが、洗剤には「石けん」と「合成界面活性剤」の2種類があります。「合成界面活性剤」というのは「合成洗剤」の原料です。
つまり、何かを洗うとなったときには、
1,「石けん」で洗う
2,「合成界面活性剤(合成洗剤)」で洗う
という2つの選択肢があるわけです。例えば、食器を洗うときに石鹸で洗う人もいますし合成洗剤で洗う人もいます。洗濯用や浴槽用にも「石けん」と「合成洗剤」の2タイプが存在しますね。
実は、顔を洗うときも事情はまったく同様です。石鹸は文字通り「石けん」を、洗顔フォームは「合成界面活性剤」を利用した洗顔料です。
つまり、顔を洗う場合には、
「石けん」で洗う → 石鹸
「合成界面活性剤」で洗う → 洗顔フォーム
ということになります。
石鹸を使うか洗顔フォームを使うかという選択は、「石けん」と「合成界面活性剤」のどちらで顔を洗うか?という選択を意味するのです。
洗顔フォームは合成洗剤の一種である
早い話が、洗顔フォームは「洗顔用合成洗剤」だと思ってください。
洗顔フォームは商品としては「化粧品」に分類されるので、一般的には合成洗剤とは呼ばれません。しかし、成分的には合成洗剤と同じものです。
たとえばもし仮に、洗顔フォームとして売られている物の中身を変えずに「台所用」として販売すれば、それは「合成洗剤」という表示になります(商品分類が「化粧品」ではなくなるため)。
石鹸は大昔からある洗顔料です。これに対して、新しいタイプの洗浄成分である「合成界面活性剤」を原料に、“顔を洗う用の合成洗剤”を作ったものが洗顔フォームなのですね。
したがって、洗顔フォームは石鹸をマイルドに改良したものと言うよりは、むしろ、合成洗剤をマイルドに改良して石鹸(のようなもの)を作ったものと言った方が正解です。
2)石鹸と洗顔フォームはどっちの方が肌に良い?
石鹸と洗顔フォームの成分上の違いは理解できたと思います。
次は、どちらの方が肌に優しいのか?という問題を見ていきましょう。
石鹸は理想的な洗顔料である
結論から言ってしまうと、石鹸の方が肌に良いです。
石鹸は肌を洗うものとして、これ以上は望めないほどに理想的な洗剤です。
石鹸がどれほど肌に優しいかを知るためには、体の肌と顔の肌を見比べてみれば十分でしょう。
もしも石鹸が何かしら肌に悪いのだとしたら、石鹸で洗いつづけている手や体の肌は荒れているはずです。しかし実際には、ほとんどの人が体の肌の方が美しさを保っているのではないかと思います。
肌は全身一続きの皮であり、作りはどこでもだいたい同じです。石鹸で体を洗っても平気なのに、顔を洗うと肌に悪いなんてことは絶対にありません。
石鹸の肌への優しさは、私たち自身の肌ですでに証明済みというわけです。
専門家の意見
ここで少し専門家の意見を見てみましょう。
ドラッグストアでは未だに洗顔フォームがよく売れているようですが、美容に詳しい人たちの間では「石鹸の方が肌に優しい」というのはもはや常識の1つになっています。
試みに手元にある書籍から、洗顔料に関する記述をいくつか引き抜いてみましょう。
結論として、洗顔料は、シンプルな固形石けんがいちばんです。しっかりと汚れが落ちて、肌に余分なものが残らないからです。
『スキンケア基本事典』p58,吉木伸子
顔にいい洗顔料は何でしょう。これは伝統ある石けんが一番です。なぜなら、石けんの洗浄力は、肌にちょうどいいからです。
『誤解だらけのスキンケア』p20,北原東一
洗顔フォームには合成洗剤などが含まれているので、肌は確実にいたみます。「弱酸性」「肌にやさしい」などとうたった商品であっても、おすすめできません。
『化粧品を使わず美肌になる』p51,宇津木龍一
目先のしっとり感にごまかされやすいが、洗顔フォームこそ乾燥肌の元凶なのである。
『正しい化粧品が美肌をつくる』p19,小澤王春
「石鹸or洗顔フォーム」の選択では圧倒的に石鹸の方が推奨されているのがわかると思います。
ここに引用したのはごく一部ですが、本屋にでも行ってスキンケア関連の書籍を片っ端からめくってみれば、専門家の間でいかに石鹸が支持されているかがわかるはずです。
逆に「洗顔フォームの方が肌に良い」などと言っている人は見たことがありません。もし専門家に投票でもさせたら、支持率に9対1以上の差が出ることはまず間違いないように思います。
洗顔フォームの問題点
なぜ専門家は口を揃えて「石鹸を使いなさい」と言うのか?洗顔フォームのいったいどこがいけないのか?
洗顔フォームが合成洗剤と同じ成分でできているといっても、それがそのまま台所用洗剤と同じくらい肌に悪いということにはなりません。
台所用洗剤と比べれば洗顔フォームは洗浄力が低めに作られていますし、商品としての審査基準も厳しくなっています。
とはいえ、合成洗剤が持つ欠点をそのまま受け継いでいることも事実です。
洗顔フォームがどのように肌に悪影響を及ぼすのか、次の章で詳しく見ていきましょう。
3)洗顔フォームが肌に悪い理由
洗顔フォームが肌に悪いとされる理由は、原料の「合成界面活性剤」という洗浄成分が持つ化学的な特性にあります。
別に、石鹸は「天然」だから肌に優しく、洗顔フォームは「合成」だから肌に悪い、という話ではありません。石鹸だって人間の手によって「合成」されたものに違いありませんからね。
ただ、「合成界面活性剤」を洗剤として使った場合、どうすることもできないあるデメリットが生じてしまいます。それが長期的に見たときに、肌を荒れさせ、乾燥肌を生み出す原因になっているのです。
合成洗剤は安定しすぎている
石けんと合成洗剤の最大の違いは、洗剤としての安定性にあります。
洗顔の場合には、洗顔後に水ですすいだときに違いが出ます。
石けん:水ですすぐと洗剤でなくなる
合成洗剤:水ですすいでも洗剤のままである
いわば、合成洗剤は成分として“安定しすぎている”のですね。以前は下水から川に流れてもまだ分解されなかったので、合成洗剤が大きな環境問題になりました。
この合成洗剤の安定性が洗顔フォームの欠点にそのまま繋がっています。
洗顔フォームは洗剤が肌に残留する
洗顔料で顔を洗うと、どれほどすすぎを徹底したとしても、洗剤の一部はかならず肌に残留します。この点は石鹸でも洗顔フォームでも変わりません。
なぜそのようなことが起きるのか? 洗剤は油にくっつく成分であり、肌には油が含まれているからです。その吸着力によって油性の汚れを落とすわけですが、肌に含まれる油にもくっついて離れなくなるのです。
しかし、石鹸の方は水ですすいだ時点で洗浄力を失い、肌にとって無害な成分に変化します。この「顔を洗っている間だけ洗剤になる」という特性が、肌を洗う上で非常に都合が良いために、石鹸は理想的な洗顔料なのです。
一方、洗顔フォームの方は合成界面活性剤でできていますから、水ですすいだ後も洗剤のままで肌に居残ります。こうして洗剤にくっつかれた肌の油はもう使い物にならなくなってしまい、次回の洗顔時に水に流されてしまいます。
もしここで台無しにされる肌の油が大したものでないのなら問題にならないのですが、この油は「細胞間脂質」と呼ばれ、肌の潤いを保っている成分そのものなのです。最近よく聞く「セラミド」も細胞間脂質の一種ですね。
結果的に、洗顔フォームを使っていると、毎日少しずつセラミドなどの保湿成分を肌から無駄に流出させることになってしまいます。これが洗顔フォームの使用が乾燥肌に繋がる理由です。
洗顔フォームを使うと損をする
洗顔フォームが肌に悪いのは、以上のような「肌への残留性」があるためです。
もちろん、肌に残る洗剤はわずかです。失われる保湿成分もわずかです。1回や2回洗顔フォームを使ったからといって、すぐに肌がダメになるようなものではありません。
ですが、1日2回、1年で700回以上も、洗顔料で肌を洗うのです。
洗顔フォームを使っていると、まるで税金か何かのように、洗顔をするたびに毎日少しずつ保湿成分を支払いつづけるハメになります。しかもそれは石鹸を使っていれば支払わずに済んだ損失なのです。
つまり、洗顔フォームを使っている人はそれだけで、石鹸を使っている人よりも少し損をしているわけです。
幸いにも、肌の回復力は素晴らしいもので、石鹸洗顔をしばらく続けると、徐々に保湿力が高まり、肌質が改善されていきます。数ヶ月後には乾燥を覚えにくい肌になっているでしょう。
4)洗顔フォームの方が使用感が良いのはなぜ?
皆様の中には、いくら石鹸の方が肌に優しいと言われてもイマイチ納得できない人がいるかと思います。
というのも、洗顔フォームは使用感が抜群に良いからです。使ってみた感触で言えば、どう考えても洗顔フォームの方が肌に優しそうな感じがするのです。
石鹸だと肌がつっぱるけど、洗顔フォームならしっとりと洗い上がる──このような違いを他ならぬ自分の肌で体感してしまうと、洗顔フォームの方が肌に優しいのだと判断するのも無理はありません。
しかし、北原東一氏が言うように「使用感と利便性がいいからといって肌にいいわけではない」(『誤解だらけのスキンケア』p20)のです。
洗顔フォームのしっとり感の正体
「肌に悪いはずなのに使用感が良い」というあべこべな性質は、洗顔フォームの成分表をみればすぐにそのカラクリがわかります。
石鹸と洗顔フォームの一般的な成分組成はだいたい以下のようになっています。
石鹸=『石けん』
洗顔フォーム=『合成界面活性剤』+「油分や保湿剤」
『』で囲った部分が洗浄成分です。見ての通り、石鹸の方はほぼ100%石けん成分でできています。これは石けんに余計な物を添加すると極端に洗浄力が下がってしまうためです。
一方、洗顔フォームの方はどうかと言うと、
合成洗剤はいろいろなものを混ぜても洗浄力が落ちません。そこで、油脂やグリセリンなどを混ぜることができます。それらを混ぜることで、洗顔後の乾燥感をまぎらわせ、使用感がよくて、保湿効果があるように錯覚させられるわけです。
『たった1つの』p105
要するに、洗顔フォームは合成洗剤に保湿クリームを混ぜたような作りになっているわけです。
連日の食器洗いでカサカサに荒れた手でも、ハンドクリームをつけると一時的にはしっとりした感触になりますね? 洗顔フォームの洗い上がりがしっとりしているのも、これとまったく同じことです。
洗顔フォームにはあらかじめ保湿クリームが混ぜられているようなものなので、洗顔後の肌に微量の油分や保湿剤が残り、それがつっぱり感を感じさせなくしているのです。
洗顔フォームのしっとり感はごまかしでしかない
「保湿クリームが混ぜられている」と言うと何かしら良いことのように聞こえるかもしれませんが、実際にはそうではありません。
洗顔料は流してしまうものなので、保湿や美白などのいろいろな成分が配合されていても、全部すすぎのときに水に流れてしまいます。
『スキンケア基本事典』p58
保湿クリームが入っていると言っても「肌の保湿」という点でみれば、効果はほぼゼロです。それでも、わずかに肌に残った油膜や保湿剤が、洗顔直後のつっぱり感を紛らわせることくらいはできるわけです。
つまり、保湿効果はほぼないに等しく、使用感を良くするためだけに配合されているのです。
こうした成分上のカラクリが功を奏し、しっとり感は肌への優しさを示すものだと誤解され、結果として「石鹸よりも合成洗剤の方が肌に優しい」という逆立ちした“実感”を引き起こさせるのです。
「しっとり感=肌への優しさ」ではない
以上のように、洗顔フォームのしっとり感は「肌への優しさ」を示すものではありません。「使用感の良さ」と「肌への優しさ」はまったくの別問題です。
肌への優しさ→洗浄成分で決まる
使用感の良さ→油分や保湿剤が入っているかどうかで決まる
これらはそれぞれ別々の問題であり、まったく関連性がありません。仮にどれほど洗剤が肌に悪かろうと、洗顔後の肌に油膜が残りさえすれば、ハンドクリームをつけた肌と同様、しっとりとした感触になってしまいます。
合成洗剤と保湿クリームの混ぜ物である洗顔フォームは、合成洗剤がゆえに肌に悪く、保湿クリームがゆえに使用感が良いのです。
洗顔料は落とすことに専念する
大切なことは「肌の洗浄」と「肌の保湿」をハッキリと分けるということです。
もし保湿をしたいのであれば、洗顔後に化粧水や保湿クリームを使えばいいだけの話です。そうした方が、どうせ洗い流してしまう洗顔料に混ぜておくよりも、何倍も効率的に保湿ができるのは誰にだってわかります。
洗顔料に求められるのは、以下の2点です。
①できるだけ肌に優しく汚れを落とす
②肌に余計なものを残さない
そして、それには石鹸のシンプルさが最適なのです。
洗顔は洗顔、保湿は保湿と、しっかり役割分担をしましょう。
まとめ:石鹸を使いましょう
要するに、洗顔には石鹸を使いましょう、ということです。
石鹸の洗浄力はそれほど強くありません。油でギトギトになったお皿やフライパンを洗うときには、たしかに強力な合成洗剤方を使った方が楽に汚れを落とすことができます。
もちろん手の肌のことを考えれば石鹸を使った方がいいのですが、水仕事の大変さを慮れば、利便性の問題も無視するわけにはいかないでしょう。
しかし、それをわざわざ石鹸程度の洗浄力にまで弱め、洗顔に使用する必要はどこにもありません。石鹸の洗浄力でも十分に洗えるのであれば、問題のある合成界面活性剤で洗う理由はどこにもないのです。
合成洗剤なので油分や保湿剤を混ぜやすかった。石鹸にはないしっとり感を演出することができた。だから人気が出た──洗顔フォームはそれだけのものです。
石鹸に慣れてくると、今度は逆に洗顔フォームの「しっとり感」が気持ち悪く感じられるようになってきます。
洗顔後の肌に油膜が残り、ヌメヌメした感触になるからです。しかもその“ヌメヌメ”の中には、上述の通り、合成界面活性剤もいっしょに残っているわけですから尚更です。
余計なものを肌に残さない石鹸の、いかにも「顔を洗った!」というさっぱり感はとても気持ちが良いものです。
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