細胞間脂質とは?

“細胞間脂質”は角質に並ぶ、角質層のもう一つの構成要素です。角質間の隙間を埋めて角質層の構造を支える接着剤としての役目を果たしています。また、細胞間脂質は水を挟み込む性質があり、角質層の潤いを保つ保湿の機能も担っています。洗顔などで簡単に流れてしまうため、“洗いすぎ”による細胞間脂質の流出には注意が必要です。

角質層のもう一つの構成要素

肌の表面にある角質層は文字通り角質という物質によって構成されています。

とはいえ、角質層にはもう一つ重要な構成要素があり、それが細胞間脂質です。

角質はタンパク質でできた粉末のような物質ですので、それだけではパラパラと剥がれ落ちていってしまいます。細胞間脂質は、角質の隙間を埋めて角質同士をくっつけておく接着剤の役割を果たします。

角質がレンガだとしたら、細胞間脂質はモルタル(セメント)に当たるわけですね。両者が揃っていてはじめて角質層という安定した構造物が組み上がるのです。

細胞間脂質は油である

細胞間脂質は文字通り“脂質”、つまり油です。数種類の脂質から構成されていますが、特にセラミドが有名ですね。

角質の隙間を埋めて角質層を万全なものにする大切な脂質なのですが、その性質上流出しやすいという特徴を持っています。

例えば、肌が水に触れるだけで細胞間脂質は流れ出していってしまいます。まして石鹸や洗顔料などの洗浄剤(油を溶かす成分が入っている)で肌を洗えば、細胞間脂質はどんどん流出します。

水仕事をしたり洗剤で洗い物をしたりすると手が荒れるのは、細胞間脂質が流出してしまっているからなのですね。

角質の隙間を埋めていた細胞間脂質が流されると、当然ながら角質もがたついてしまいます。がたついた角質の隙間からは水分が蒸発し、肌の乾燥に直結します。

美容に詳しい人が口を揃えて「洗いすぎるな」と言うのは、細胞間脂質が失われると肌が簡単にだめになってしまうからなのです。

細胞間脂質は保湿の要でもある

細胞間脂質は単に角質を貼り付けておくだけでなく、同時に水を抱え込んでおく機能もあります。

一般的に「肌の潤い」と言うときは角質層に含まれる水分を指しますが、その約80%ほどを細胞間脂質が保持しています。

細胞間脂質はまさに保湿の要とも言えるものなのです。

現在化粧水や美容液に含まれる保湿成分のなかでもっとも値の張る物は、おそらくセラミドでしょう。上で述べたように、このセラミドはもともと細胞間脂質として肌が備えている成分なのです。

セラミド配合の化粧水のなかには数万円するものもありますが、そんなものを使うよりも洗顔で細胞間脂質を流出させないように気をつける方がはるかに効果的です。

化粧水などで補ったところで肌が本来持っている保湿能力の足下にも及びませんし、たとえば洗顔時間が数十秒長ければ化粧水で補った以上のセラミドがいとも簡単に流出してしまいます。

化粧水や美容液も使い方次第で優秀な補助役にはなりますが、保湿の基本はあくまでも肌の保湿成分を失わないようにすることです。

洗顔で惜しみなく大量の細胞間脂質を流してから、数万円の化粧水で微々たる量のセラミドを補う……などという状態では笑い話にしかなりません。