最近、水だけで洗顔を行う“水洗顔”が人気です。
しかし、「肌がキレイになった!」「乾燥肌が治った!」という喜びの声がある一方で、「肌が荒れてきた…」「ニキビが増えた…」などという失敗例もよく見かけます。
水洗顔には向いている肌とそうでない肌とがあります。プラスに働くかマイナスに働くかは状況によりけりなので、よく検討してから行わなければなりません。
今回は水洗顔は本当に肌に良いのか、どのような肌に向いているのか、この辺りを解説していきます。
1)水洗顔は本当に肌に良い?
水洗顔はメリットばかりが喧伝されているものの、実際にはかなり極端な洗顔法です。まずはその点をよく理解することからはじめましょう。
水洗顔は肌を選ぶ
結論を先に言ってしまうと、水洗顔はほとんどの人にはおすすめできない洗顔法です。
肌質別に水洗顔の適正度を示すとだいたい以下のようになるでしょう。
脂性肌=適さない
乾燥肌=あまり適さない
敏感肌=適している場合もある
超敏感肌=適している
基本的にはきちんと洗顔料を使って洗顔した方が肌はキレイになります。
唯一の例外が、洗顔料の刺激に反応してしまうような超敏感肌の人です。肌が極度に弱っている場合には洗顔料の刺激を避ける水洗顔が正解になります。これは“美容”というよりも“治療”に近いケースだからです。
基本的に水洗顔は超敏感肌のリハビリ専用だと割り切ったほうがいいでしょう。この点に関しては「超敏感肌の人のための水洗顔の正しいやり方」の方にまとめてあります。
水洗顔は極端な洗顔法である
水洗顔を検討している方に知っておいてほしいのは、水洗顔はかなり極端な洗顔法である、ということです。
洗顔料を使う場合に比べて、水洗顔の洗浄力は圧倒的に劣ります。
試しに、手にハンドクリームを塗ってから、水だけで洗ってみてください。指で擦りでもしない限り、いつまで経ってもヌルヌルが取れないはずです。
もしここで石鹸を使えばヌルヌルはあっという間に落ちます。石鹸の泡を数秒間触れさせるだけで十分でしょう。洗顔料を使った場合とそうでない場合とでは、汚れを落とす力にそのくらいの差があるのです。
洗顔は『洗浄によるダメージ』と『汚れによるダメージ』との間の綱引きです。洗いすぎれば肌を傷めますし、逆に汚れが残りすぎていてもトラブルを招きます。
水洗顔は一方の極に思いっきり振り切った方法です。すなわち、『汚れによるダメージ』に目をつぶる代わりに、『洗浄によるダメージ』をほぼゼロにしようという発想ですね。
それが良い方向に働くケースもあるわけですが、同時にリスクの高い方法でもあります。特に理由もなく、見切り発車で水洗顔をはじめるのはトラブルの元です。
泡洗顔は肌に悪い?
洗顔料を使った泡洗顔から水洗顔に変えると、肌の調子が上向きになる人がいることは事実です。そうなると、どうしても「泡洗顔は肌に悪いのだ」と考えたくなりますが、実際にはそうではありません。
泡洗顔が肌に悪いのではなく、間違った泡洗顔が肌に悪いだけなのです。
泡洗顔と水洗顔の違いを述べると以下のようになります。
- 泡洗顔=やり方次第で100点にも0点にもなり得る
- 水洗顔=誰がやっても60点になる
洗顔の理想は、洗顔料を使って適度に洗浄することです。泡洗顔を正しく行うことができれば、十分に汚れを落としつつ、肌を傷めることもありません。
しかし、泡洗顔には“洗いすぎ”というリスクが付きまといます。やり過ぎの泡洗顔は最悪のケースであり、いとも簡単に肌をダメにしてしまいます。
一方、水洗顔は誰がやっても確実に60点が取れる洗顔法です。
汚れを十分に落とすことができないので100点は取れませんが、洗いすぎ(=0点)になる心配もありません。
はじめから洗顔料を使わないことで、洗いすぎという最悪のケースを回避し、確実に60点を取りに行く安全策、それが水洗顔だと考えてください。
水洗顔のメリットは泡洗顔でも享受できる
- 肌が乾燥しづらくなる
- 皮脂の分泌量が抑えられる
- 肌が刺激に強くなる
以上はよく水洗顔のメリットとして挙げられるものです。たしかにこれらは嘘ではありません。
洗いすぎはあらゆる肌トラブルの最大の原因ですから、洗いすぎになっていた人が水洗顔に変えれば、乾燥肌が治り、脂性肌が改善され、敏感肌が解消することもあるでしょう。
しかし、これらのメリットはすべて、“正しい”泡洗顔を実践した場合にも同じく享受できるものです。
というのも、水洗顔に何か特別な効果があるわけではなく、水洗顔によって強制的に“洗いすぎ”が解消されたために生じるメリットに過ぎないからです。
次章で述べるように、水洗顔には洗浄力が低いことによるデメリットが存在します。単に洗いすぎを回避するだけなら、泡洗顔のやり方を改善すればいいだけの話なのです。
2)水洗顔のデメリット
前章では「わざわざ水洗顔にしなくても正しい泡洗顔をすればいいんだよ」という話をしました。
なぜ、水洗顔よりも正しい泡洗顔を目指すべきなのか? それは水洗顔に切り替えるのには様々なリスクがあるためです。
この章では、水洗顔にどのようなリスクがあるのか、水洗顔のデメリットについて詳しく見ていきます。
過酸化脂質によるダメージ
すでに述べたように、洗顔料を使う場合に比べて、水洗顔の洗浄力ははるかに劣ります。
よほど極端な例(もともと皮脂の分泌量が少なく、基礎化粧品もメイク料も使わない人)でもない限り、どんなに丁寧に洗顔したとしても、汚れを十分に落とすことはできないと思った方がいいです。
肌の上にある皮脂や化粧品の油分などは、時間とともに酸化して「過酸化脂質」という物質に変化します。過酸化脂質は肌をじわりじわりと蝕み、肌がキレイになろうとする足を引っ張ります。
洗いすぎによるダメージに比べれば、過酸化脂質による害は小さいため、場合によっては無視しても良いこともあります(極度に弱った肌を回復させるときなど)。
しかし、過酸化脂質によるダメージを受けつづけている限り、肌の育ち度は一定のところで停滞してしまいます。洗顔料が使える肌状態であれば、きちんと洗顔料を使って汚れを落としてあげた方が肌の調子は上向きになります。
ニキビや脂漏性皮膚炎のリスク
水洗顔にすると皮脂が肌に多く残ることになるため、各種の皮脂トラブルが起こりやすくなります。
皮脂の分泌量が多い人だと、水洗顔にした途端にニキビが増えたり、できやすくなったりすることがあります。アクネ菌の餌となる皮脂が肌に多く残ることになるためです。
また最悪の場合、脂漏性皮膚炎などのリスクもあります。脂漏性皮膚炎はマラセチアという真菌(カビ)が原因とされており、肌に残った過剰な皮脂が菌の増殖に繋がり、それが炎症を起こすと考えられています。
いずれにしても、水洗顔の洗浄力不足によって肌の上が油分過多になるために起きるトラブルです。皮脂の分泌量が多い人ほどなりやすいため、肌がオイリー気味の人は注意が必要です。
水洗顔でできる「かさぶた」
水洗顔に変えると顔中にかさぶたのようなものができる人がいます。
Googleで「水洗顔 」と打ち込むと「水洗顔 かさぶた」という予測候補が出てきます。それだけ多くの人が検索しているわけで、けっして稀な症状ではないことを物語っています(ちなみに「水洗顔 り」と入力すると「水洗顔 リバウンド」の予測が出ます)。
この「かさぶた」は、もともと洗いすぎの洗顔をしていた人が水洗顔に切り替えたときにのみ起きる症状です。一気に洗浄度合いが下がったことによる、極端(洗いすぎの泡洗顔)から極端(水洗顔)への移行に肌がついてこられていない証拠です。
この変化を「好転反応」(肌が回復するときに見られる良い反応)と説明している情報源もありますが、「かさぶた」までいくと明らかに度が行きすぎです。
このかさぶたは皮脂を多く含んだ垢ですので、アクネ菌をはじめとする皮脂を好む菌などの温床になります。放っておくとニキビや脂漏性皮膚炎の原因になるため、水洗顔を中止しなければなりません。
3)水洗顔が向かないケース
ある程度の洗浄力を必要とする以下のようなケースには、水洗顔はハッキリと適していません。きちんと洗顔料を使って洗顔するようにしましょう。
基礎化粧品を使っている
もし化粧水・美容液・乳液・クリームなどの基礎化粧品を使っているのであれば、水洗顔は向いていません。
皮脂は比較的水だけでも洗い流しやすい汚れです。しかし、基礎化粧品は肌に定着するように作られているため、水ですすぐだけでは十分に落ちません。
化粧品には油分はもちろん、多種多様な化学成分が配合されており、それらを肌に残していると肌荒れの原因になってしまいます。基礎化粧品を肌に塗っているのであれば、洗顔料を使ってきちんと落とす必要があります。
水洗顔は肌に何も塗っていない(=皮脂くらいしか落とすものがない)からこそ成立する洗顔法である、という点を頭に入れておきましょう。
クレンジング後の洗顔
クレンジング後の仕上げ洗顔にはかならず洗顔料を使ってください。水洗顔では明らかに洗浄力不足です。
「W洗顔は肌に悪い」という情報を鵜呑みにして、クレンジング剤だけで済ませようとする人もいますが、これはかえって肌に悪いです。
一般的なクレンジング剤は洗顔料とは比較にならないほど強力な洗剤です。
仕上げ洗顔を水だけで済ませようと思ったら、クレンジングの時点でメイクを落としきらなければなりません。そのためには、強力な合成洗剤が入ったクレンジング剤で、時間をかけて丁寧にクレンジングをするしかありません。しかし、これではあっという間に肌がボロボロになってしまいます。
強力なクレンジング剤一本でメイクを落としきるよりも、クレンジングはあくまでも大方のメイクを落とすに留め、残りは石鹸で仕上げをした方が、結果的に肌に負担がかかりません。二度洗顔するというよりも、途中で肌に優しい洗顔料にバトンタッチすると捉えるといいでしょう。
皮脂の分泌が過剰になっている
皮脂の分泌量が多く、肌がオイリーになっている人には水洗顔は不向きです。すでに述べたように、ニキビができやすくなったり、最悪の場合は脂漏性皮膚炎などを引き起こす可能性もあります。
洗いすぎの洗顔をやめて水洗顔をつづけていると、徐々に皮脂の過剰分泌が収まってくることは事実です。しかし、水洗顔をはじめたからといってすぐに効果が出るわけではありません。
また、皮脂の過剰分泌は洗いすぎによるものだけではないため、必ずしも水洗顔で油分肌が改善するとは限りません。もし原因が体質・ホルモンバランス・食生活などによるものだった場合、水洗顔に変えるとただただ洗浄力だけが下がってしまう結果になります。
いずれにしても水洗顔に変えてしばらくの間は、皮脂の分泌は過剰なままなのに、洗浄度合いだけが極端に弱められることになり、結果的にさまざまな皮脂トラブルが発生しやすくなります。
まとめ
水洗顔は肌に良いと評判ですが、万人におすすめできる洗顔法ではありません。
肌が過敏になっている場合を除けば、きちんと洗顔料を使って洗顔をした方が肌のためになります。肌にダメージを与えない範囲でなら、汚れはきちんと落とすにこしたことはないのです。
繰り返しますが、洗顔料の使用自体が肌に悪いのではなく、洗顔料を使って洗いすぎた場合が肌に悪いのです。洗いすぎにならないようにさえ気をつければ、泡洗顔が肌をダメにすることはありません。
わざわざ水洗顔という極端に走らずとも、洗いすぎにならないように気をつけながら正しい泡洗顔を実践すればいいのです。
正しい洗顔方法については「正しい洗顔のやり方まとめ」の方にまとめてあるので参考にしてください。