普段からクレンジングをしているけれど、どういう仕組みでメイクを落としているのかまでは知らない、という人も多いでしょう。
別にそんなこと知る必要ないと思われるかもしれませんが、仕組みをきちんと把握していないと、肌に優しいクレンジングがどのようなものかを理解することはできません。
クレンジングの仕組みは実はとてもシンプルです。
今回は、クレンジングがいったいどういう仕組みでメイクを落としているのか、わかりやすく解説していきます。
1)クレンジングの原理
クレンジングの基本原理は『油で浮かせ、洗剤で落とす』という二段構えになっています。
そのため、実際のクレンジングは、
- 「メイク浮かし」……『油分』が必要
- 「メイク落とし」……『洗剤(界面活性剤)』が必要
という2つの工程に分けられます。
第1工程「メイク浮かし」とは?
肌をキレイに洗浄するためには、最終的には水で洗い流さなければなりません。
しかし、いきなり水で洗い流そうとしても不可能です。
メイク料は油性の基剤に顔料を混ぜたものが一般的です。つまり、メイクは『油』でできています。
そのため、メイクをしている状態の肌は、ワックスが塗られた車のような状態です。油でコーティングされているので水を弾きます。肌にぴったりと張り付いているので鉄壁です。
メイクを落とすためには、まず第一段階として、肌に張り付いたメイク料を浮き上がらせ、この鉄壁の防御を崩さなければなりません。
これがクレンジングの第一段階「メイク浮かし」です。
「メイク浮かし」には『油分』が必要
メイクを溶かして肌から浮かせるためには「油分」が必要です。
水彩絵の具に使った筆は水で洗いますが、油絵の具に使った筆は油で洗います。油は油に溶けるのです。
メイクも言ってしまえば“油性の絵の具”です。
水性の絵の具を水に触れさせると、絵の具が溶け出してきます。これと同じで、メイク料に油を触れさせると、油にメイクが溶け出してきて肌から浮き上がります。
そのため、メイク浮かしには油分が多く含まれたものを使います。典型的なクレンジング剤がオイルやクリームでできているのも、それらには油がたっぷり含まれていて、メイクを溶かし出す能力が高いためです。
メイクの上でオイルやクリームをにゅるにゅる撹拌していると、徐々にメイクが溶け出してきます。こうして肌にこびりついていたメイクが浮き上がると、クレンジングの第一段階が完了します。
第2工程「メイク落とし」とは?
油分によって肌から浮いたメイクはもはや鉄壁ではありません。
ワックスのように肌にぴったりと張り付いていたメイク料が、今ではゆるゆるの状態で肌の上に乗っかっているだけになりました。
この時点では2種類の油が肌の上で混ざり合っています。すなわち、メイク料そのものと「メイク浮かし」に使用した油分の2つです。
ここでいったん水ですすげば、大部分の油分は流され、肌にはうっすらとした油膜だけが残ります。
ここまでくれば、洗剤を使って簡単に洗い流すことができます。
肌から浮いたメイク料を、洗剤の力で洗い流す。これがクレンジングの第2工程「メイク落とし」です。
「メイク落とし」には『洗剤』が必要
水で油を洗い流すためには「洗剤」が必要です。
洗剤とは界面活性剤のことで、洗顔料もここに入ります。
すでに肌の上には油膜しか残っていないとはいえ、油は油ですから、水だけで洗い流すのは大変です。ヌルヌルした感触がなかなか落ちてくれません。
そこで洗剤(界面活性剤)の登場です。洗剤は油を水に溶かし出す成分ですので、洗剤を使えば油膜を水に溶かして流すことができます。
こうして肌に残った油分を洗い流すと、クレンジングが完了したことになります。
2)クレンジング剤の仕組み~2つのタイプ
次に、クレンジングには欠かせないアイテムであるクレンジング剤について見ていきます。
「メイク落とし」には洗顔料が控えていますから、クレンジング剤は基本的に「メイク浮かし」の方を担当します。
クレンジング剤の必要条件は『油分』
クレンジング剤は「メイク浮かし」を担当するので、『油分』が含まれていることが条件になります。
逆に言うと、『油分』が多く含まれてさえいれば、どのようなものであってもクレンジングに使うことができます。
例えば、オリーブオイルやスクワランオイルなどの純粋なオイルでクレンジングをする人もいます。コールドクリームを使う人もいますし、ちょっと大変ですが保湿クリームやワセリンなどでもクレンジングが可能です。
メイクを浮かす力は油分の量で左右されます。例えば、ほぼ油分100%のオイルなら落ちにくいメイクでも溶かせますが、乳液までいくと油分が少なめになるので簡単なメイクしか溶かせません。
別にクレンジング剤として売られているものでなくても、『油分』が多く含まれていれば「メイク浮かし」はできるのですね。
洗剤タイプと洗剤不使用タイプ
上で述べたように、クレンジング剤の最小構成要素は『油分』です。
しかし、実際に市販されているクレンジング剤としては、『油分』のみでできているものは少数派です。
では、『油分』以外に何が追加されているのか? それは、合成洗剤(合成界面活性剤)です。
- 洗剤タイプ…『油分』に『合成洗剤』を追加したもの
- 洗剤不使用タイプ…『油分』のみで構成されているもの
当サイトでは、前者を“洗剤タイプ”、後者を“洗剤不使用タイプ”と呼んで区別しています。
洗剤不使用タイプの方は『油分』以外の何物でもないので解説は不要でしょう。基本的にはオイルかクリーム(油に水を加えて乳化させたもの)のどちらかの形態になります。
洗剤タイプの方は少し解説が必要だと思いますので、以下で簡単に説明します。
洗剤タイプのクレンジング剤
大部分のクレンジング剤には合成洗剤が混ぜてあります。
市販のクレンジング剤の9割は洗剤タイプだと思ってください。そのため、特にこだわりなくクレンジング剤を選んでいれば、まず間違いなく洗剤タイプを使っていることになります。
でも、ちょっと不思議ですよね? 「メイク浮かし」に必要なのは『油分』だったはずです。なぜ合成洗剤なんてものが混ぜられているのでしょうか。
それには、主に2つの目的があります。
- 「メイク浮かし」の力を強めるため
- 「メイク落とし」を兼用させるため
それぞれ詳しく見ていきましょう。
洗剤タイプは「メイク浮かし」の力が強い
まず1の「メイク浮かし」の力を強めるという点です。
『油分』を使った「メイク浮かし」の原理は「油は油に溶ける」という“同質性”に基づいたものです。そのため、メイクの溶け方はゆるやかです。
これは言い換えれば、メイクを完全に浮かせるためにはじっくりゆっくり馴染ませる必要があり、クレンジングに少し時間がかかるということです。
一方、洗剤というのは積極的に油にくっつく成分です。油を見つけるとアグレッシブに飛びかかっていきます。
それゆえ、クレンジングに使う油分に洗剤を混ぜておくと、洗剤が切り込み隊長のような働きをして、迅速かつ強力にメイクを浮かせることができるのです。
このような事情から、基本的に洗剤タイプの方が「メイク浮かし」の力が強く、落ちにくいメイクでも簡単に落とすことができるようになっています。
洗剤タイプは「メイク落とし」を兼用できる
次に2の「メイク落とし」を兼用させるという点です。
本来クレンジング剤は「メイク浮かし」を担当するものです。「メイク落とし」の方はクレンジング後に使う洗顔料の仕事のはずでした。
しかし、洗剤タイプのクレンジング剤には「メイク落とし」に必要な『洗剤』が最初から含まれています。
そのため、洗剤タイプはやろうと思えば一人二役をこなすことができます。つまり、洗顔料を使わなくても、水ですすぐだけでメイクと油分を洗い流すことができるのです。
結果的に、クレンジング後にするはずだった洗顔料による洗顔を省略することが可能になります。いわゆる「シングル洗顔」ですね。
ただ、後述するように、クレンジング剤オンリーのシングル洗顔は肌に負担がかかるので、実際にはW洗顔をするのが主流になっています。
洗剤タイプはとんでもなく肌に悪い
以上2点が洗剤タイプに合成洗剤が混ぜてある理由です。しかし一方で、洗剤タイプには大きなデメリットが存在します。
それは、合成洗剤を混ぜるとクレンジング剤がとんでもなく肌に悪い代物になってしまう、ということです。
ただの油分だけでメイクを浮かしている分には、肌にはほとんど負担がかかりません。洗剤が混ぜられていないクレンジング剤は、マッサージオイルやマッサージクリームなどと成分的に変わりがありません。
しかし、ここに合成洗剤を混ぜてしまうと、クレンジング剤は一変して肌に有害なものに変わります。言うなれば、「クレンジング用合成洗剤」になってしまうわけです。
肌をもっともダメにするのは強すぎる洗浄力です。それゆえ、洗剤タイプのクレンジング剤の使用はあらゆる肌トラブルの引き金になります。
洗剤タイプと洗剤不使用タイプの選択
以上、洗剤タイプの仕組みと、そのメリット・デメリットについて見てきました。
洗剤タイプと洗剤不使用タイプ、どちらを使えばいいのでしょうか?
言うまでもなく、肌に優しいのは洗剤不使用タイプの方です。
とはいえ、純粋な『油分』だけではなかなか浮いてくれないような頑固なメイクが存在することも事実です。そういったメイクを落とすときには、洗剤タイプの強力なクレンジング力が頼りになることもあります。
洗剤タイプを使うときには、本当にそこまで強いクレンジング力が必要なのかどうかの見極めが大切です。ただの『油分』だけでメイクが十分に浮くのであれば、そちらを使うのに越したことはないですからね。
3)クレンジング方法の3つのパターン
最後に、実際のクレンジングのやり方について見ていきましょう。
1章で見たように、メイク落としには『油分』と『洗剤(界面活性剤)』が必要です。どちらが欠けてもいけません。
例えば、普通の洗顔でメイクが落ちないのは、洗顔料の泡は『水+洗剤』であり、メイクを浮かすための『油分』が欠けているためです。
従って、クレンジングをしている人であれば、意識しているかどうかに関わらず、『油分』と『洗剤』を組み合わせてメイクを落としています。
ただ、『油分』と『洗剤』の組み合わせ方によって、クレンジング方法は以下の3通りに分かれます。
1,ダブル洗顔
=洗剤タイプのクレンジング剤(油分+合成洗剤)+洗顔料
2,クレンジング剤オンリーのシングル洗顔
=洗剤タイプのクレンジング剤(油分+合成洗剤)
3,洗顔料オンリーのシングル洗顔
=洗剤不使用タイプのクレンジング剤(油分)+洗顔料
見ての通り、いずれの選択肢も『油分』と『洗剤(合成洗剤or洗顔料)』を含んでおり、メイクを落とすための必要条件は満たしています。
では、いったい何が違うのか? それは、「どれだけ簡単にメイクを落とせるか」と「どれだけ肌に負担がかかるか」の2点です。
以下でそれぞれの方法の内実を見ていきましょう。
1,ダブル洗顔
洗剤タイプのクレンジング剤と洗顔料を組み合わせて使います。もっとも一般的なクレンジング方法でしょう。
ダブル洗顔とは、『合成洗剤』と『洗顔料』という二つの洗剤(界面活性剤)によって肌が二度洗浄されることを意味します。
洗顔料の方はマイルドな洗剤ですが、クレンジング剤に混ぜられている合成洗剤の方はかなり強力な洗剤です。当然、肌にもかなりの負担がかかります。
洗剤タイプを使っているので落ちないメイクはまずありませんし、メイクを楽に落とすことができますが、その反面、非常に肌に悪いクレンジング方法でもあります。
2,シングル洗顔(クレンジング剤のみ)
洗剤タイプのクレンジング剤のみを使ったクレンジング方法です。
洗顔料を使わない分、ダブル洗顔よりも肌に負担が少なそうですが、実際にはこちらの方がなおいっそう肌に悪いです。
なぜなら、クレンジング剤だけでメイクを完璧に落としきろうと思ったら、じっくり丁寧にクレンジングをしなければならなくなり、クレンジング剤(に含まれる合成洗剤)が肌に触れる時間が長くなってしまうためです。
それをするくらいなら、クレンジング剤では手早くおおざっぱにメイクを浮かせるだけにし、キレイに仕上げるのはマイルドな洗顔料に任せた方がまだマシなのです。
なので、基本的にこの選択肢は“ナイ”と思ってください。
3,シングル洗顔(洗顔料のみ)
洗剤不使用タイプのクレンジング剤と洗顔料を組み合わせた方法です。
先に述べたように、クレンジング剤として売られているものでなくても、油分の多いオイルやクリームであれば代用が可能です(ただし使い勝手は専用のものに劣ります)。
クレンジングの原理から考えるともっともシンプルな組み合わせですね。『油分』と『洗剤』を一つずつ用意し、油で浮かし、洗剤で落とす。そのまんまです。
2つのアイテムを使うのでダブル洗顔のようにも見えますが、クレンジング剤の方に洗剤が含まれていないので、肌に触れる洗剤は洗顔料オンリーのシングル洗顔です。
当サイトで推奨している純クリームクレンジングや、巷でよく話題になるオリーブオイルクレンジングなどが該当します。コールドクリームを使った昔ながらのクレンジングもここに入ります。
メイク浮かしには純粋な油分のみを使い、洗剤の方はマイルドな洗顔料だけを使用するため、考えられる中でもっとも肌に優しいクレンジング方法です。
どのクレンジング方法がベストなの?
3種類の組み合わせのうち、どれがベストな方法なのでしょうか?
肌への優しさなら3の方法がダントツです。この方法を採用した時点でクレンジングは攻略したも同然と言えます。
ただし、使っているメイクの種類によっては落ちにくさを感じることもあります。
なので、基本的には3の方法にし、それで落ちないメイクがあったときは1の方法にする、というのが現実的です。
この点に関しては「自分に合ったクレンジング剤を選ぶための2つのポイント」にまとめてあるので、詳しくはそちらを読んでみてください。
まとめ
長い記事でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。クレンジングの仕組みがなんとなく理解できたでしょうか?
仕組みの部分を理解すると、クレンジングのことがよくわかってきます。メイクを落とすためにはいったい何が必要なのか、また何が本当は必要でないのか。
この記事を読んだ後だと、クレンジングに関する他の記事の内容がするすると頭に入ってくるはずです。せっかく理論を学んだのですから、ぜひ実践的な記事の方にも目を通してみてください。