「朝は水洗顔だけ」はオススメできない
NGケアとまでは言えませんが、朝の洗顔を水だけで済ませるのはやめた方が無難です。
朝は水だけで洗顔する?
肌荒れから乾燥肌から敏感肌、毛穴の開きから角栓から黒ずみに至るまで、ほとんどの肌トラブルの原因は“洗いすぎ”にあります。
このことは昨今声高に叫ばれており、今時どの美容本を開いても「洗いすぎるな」と書いてありますね。
そのためか、朝は水洗顔だけで済ませるという洗顔法が流行っているようです。
毛穴の黒ずみ対策として取り入れている人もよく見かけますね。
毛穴に洗顔料が触れる回数を減らすことで負担を減らし、毛穴がゆっくりと回復できるようにしてやろうということです。
NGとまでは言えないけれど…
先に結論を言ってしまえば、毛穴の黒ずみを治す上で朝を水洗顔だけで済ませるのはあまりオススメできません。
NGケアとまでは言えないかもしれません。黒ずみを治すために洗顔を控えめにする…という方向性自体はまったく間違っていないのです。
しかし、水洗顔は泡洗顔に比べると圧倒的に油汚れを落とす力が低くなります。
健康な肌なら水洗顔でも問題ありませんが、毛穴の黒ずみができた肌はたいてい皮脂の分泌が過剰になっており、さらに肌表面が荒れて油分が落ちにくい状態になっています。
このあたりの事情は「毛穴の黒ずみ対策に水洗顔は失敗しやすい」を読んでください。
洗いすぎるよりは水洗顔の方がはるかにマシですが、やはり朝も正しい石鹸洗顔がベストです。
「あなたは野外で寝ているのですか?」
「朝は水洗顔だけ」派の主張によく使われるフレーズに、「あなたは野外で寝ているのですか?」というものがあります。
つまり、「日中は外に出たりして汚れの多い環境に身を置くけれど、夜から朝にかけてはきれいな室内にいるでしょう?そもそも朝の時点では汚れなんてあまりついていないのよ。だから、水だけで洗って肌のダメージを減らしてあげるのが正解なの」ということですね。
この主張は、半分は正解で半分は間違っています。
たしかに朝よりも夜の洗顔の方が相対的に重要性が高いのは事実です。
しかし、いくらきれいな室内にいようとかならず肌や毛穴に付着するものがありますね。
それは“皮脂”です。こればっかりはどこにいようが眠っていようが毛穴から絶えず分泌されているわけです。
やっぱり朝も石鹸洗顔がベスト
眠っている間も皮脂は分泌されますし酸化もします。やはり朝もきっちり石鹸を使った洗顔をするべきです。
泡洗顔は皮脂のためにある
そもそもわざわざ洗顔料を使って洗顔をするのは、皮脂の存在があるためです。
水溶性の汚れ、空気中の塵やほこりや細かい金属片など、これらの汚れは水ですすぐだけで十分落ちます。
その上、肌は新品の携帯に張ってある保護フィルムを何枚も重ねたような作りになっており、毎日いちばん上のフィルムがぺろんと垢として剥がれ落ちます。
なので、肌にとって有害な物質でなければ放っておいてもさして問題ないのです。翌日には垢と一緒に肌から離れていきますからね。
ただ、皮脂などの油分だけは長時間放っておくわけにはいかないのです。
洗顔で落としたいのは“過酸化脂質”
洗顔で落としておきたいのは、分泌されてから時間の経過した皮脂です。
というのも、皮脂などの油分は時間の経過とともに酸化して“過酸化脂質”に変わるからです。
この“過酸化脂質”は肌の細胞間脂質をダメにしてしまうちょっと怖いやつです。周囲の脂質に酸化を伝染させるため、よく「腐ったみかん」に喩えられますね。
皮脂は保護・柔軟・保湿を担う天然のクリームですが、時間が経過すると落とすべき汚れに変化します。
この点はメイク料も乳液も保湿クリームもすべて同じです。肌の上の油分は時間が経つにつれてかならず酸化しますから、定期的に洗顔で落とさなければいけません。
洗顔は間隔が大事
そのため、洗顔は時間の間隔が重要になります。
酸化していない皮脂は落とす必要がない、というより落とさない方が肌にとって有用ですから、短い間隔で何度も洗顔をしても無意味です。
逆に洗顔の間隔が開きすぎると、酸化が進んだ皮脂によって受けるダメージが時間の経過とともに大きくなっていきます。
夜の洗顔を終えた後、肌は洗い流された皮脂膜を再び張り直すために多くの皮脂を分泌します。そしてそれから寝るまでの間、眠っている間、起きてから朝の洗顔をするまでの間、皮脂の酸化は刻々と進行しています。
つまり、洗顔でいちばん落としたい汚れは朝の時点でしっかり肌の上や毛穴に存在しているのです。
泡洗顔自体をやめるのではなく時間を短縮する
以上のことから、やはり朝も石鹸を使って洗顔するのがベストであると言えます。
たしかに洗顔料に触れる時間を短くするという方向性は間違っていません。
ですが、完全な水洗顔にしてしまうと肌や毛穴に酸化した皮脂が残りすぎて、それはそれで別のダメージを与えることになります。
もし肌の育ち具合に自信がなく今よりも肌と毛穴の負担を減らそうと思ったら、朝の泡洗顔を丸ごとやめてしまうのではなく洗顔時間を短くするようにしましょう。
現在の洗顔時間をキープしたいという人は、夜の洗顔時間をいくらか削って、その分を朝にまわしても構いません。
例えば、朝を水洗顔にして夜に洗顔料で20秒洗うなら、朝も夜も10秒ずつ洗顔料で洗った方が肌や毛穴が受けるダメージは少なく済みます。
不安なら洗顔料で洗う時間は別に5秒でもいいのです。それだけでも、水だけの洗顔に比べると肌や毛穴に貼りついた油分の落ち方がまったく変わってきます。
“洗いすぎ”にはくれぐれも注意
当たり前の話ですが、皮脂は毛穴から分泌されます。
つまり、毛穴はもっとも酸化した皮脂によるダメージを受けやすい部分なのです。
まして黒ずみができた毛穴は開口部が開いていることが大半ですから、そこに“皮脂だまり”ができて余計に酸化ダメージを受けやすくなっています。
──と言うと、毛穴を念入りに洗ってしまう人がいるかもしれませんね……。
なので一応注意を喚起しておくと、“洗いすぎ”によるダメージは過酸化脂質によるダメージとは比較にならないほど大きなものです。
過酸化脂質はじわじわと蝕むように肌の細胞間脂質をダメにしていきますが、洗顔料などの界面活性剤はそれを見る見るうちに溶かし出して水に流してしまいます。
水洗顔では十分に落ちないので困りますが、かといって洗いすぎになるのはもっと困ります。
あくまでも必要最低限の分だけ(時間にして10~20秒ほど)洗顔料を使った洗顔をするようにしましょう。